エンジニアを採用できたのに、気づけば数ヶ月で辞めてしまった。そんな経験をお持ちの採用担当者は少なくないはずです。
厚生労働省の調査では、新規大学卒就職者の3年以内離職率は33.8%にのぼり、IT業界も例外ではありません。
早期離職は採用コストの損失だけでなく、現場の負担増やプロジェクト遅延にも直結します。
本記事では、エンジニアの定着率が低い原因と採用段階から取り組める改善策を解説します。

目次
エンジニアの定着率とは?なぜ重要視されているのか
エンジニア採用では、単に人材を確保するだけでなく「いかに長く活躍してもらうか」が重要です。
とくにIT人材不足が続く現在、採用後すぐに離職されてしまうケースも少なくありません。
ここでは、エンジニアの定着率の基本と離職率との違い、エンジニア定着率が重要な理由について解説します。
エンジニア定着率の平均や目安
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、情報通信業の年間離職率は10.2%です。定着率に換算すると約89.8%となり、産業計(85.8%)と比べるとやや高い水準にあります。
ただしこれは在籍者全体の平均値であり、新卒・若手層に限定すると実態は異なります。
同省の「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、新規大学卒就職者の3年以内離職率は33.8%、定着率換算で約66%にとどまります。
つまり採用した若手10人のうち3〜4人が3年以内に離職するのが現状であり、定着率の「目安」として念頭に置く必要があります。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」、同「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
エンジニア定着率と離職率の違い
定着率と似た言葉に離職率がありますが、この2つは意味が異なる指標です。
定着率は「一定期間後に残っている社員の割合」、一方で離職率は「一定期間内に辞めた社員の割合」を示します。
例えば、10人採用して2人が退職した場合、離職率は20%、定着率は80%です。
一般的には離職率の方が広く使われていますが、定着率を見ることで「どれだけ人材が残っているか」というポジティブな視点で組織の状態を把握できます。
エンジニア採用においては、両方の指標をあわせて確認することが重要です。
エンジニア定着率が重要な理由と離職リスク
エンジニアの定着率が重要とされる理由は、離職が企業に与える影響が大きいためです。
まず挙げられるのが、採用コストや教育コストの損失です。マイナビの調査によると、2024年の中途採用費用は1社平均650.6万円(前年比+20.9万円)に上ります。採用プロセスをデータで管理できていなければ、この費用を繰り返し投じながらミスマッチが改善されない悪循環に陥るリスクがあるため注意が必要です。
せっかく時間と費用をかけて採用・育成した人材が早期に離職してしまうと、その投資が無駄になってしまいます。
また、エンジニアはプロジェクト単位で動くことが多く、途中離脱が発生すると進行の遅れや品質低下を招くリスクもあります。
このような影響を防ぐためにも、定着率の向上は企業にとって重要な課題といえるでしょう。
出典:マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」
エンジニアの定着率が低い3つの理由
エンジニアの定着率が低い背景には、企業側の課題だけでなく、IT業界特有の構造的な要因も大きく関係しています。
人材不足やキャリア志向の高さなど、外部環境の影響を受けやすい点も特徴です。
ここでは、エンジニアが離職しやすい主な理由について整理していきます。
IT人材不足により引き抜きが増加
エンジニアの定着率が低い大きな要因の一つが、慢性的なIT人材不足です。
需要に対して供給が追いついておらず、優秀なエンジニアほど多くの企業から声がかかる状況が続いています。
その結果、他社からのスカウトや引き抜きが頻繁に行われ、現職よりも好条件のオファーを受ける機会が増えていくでしょう。
マイナビの調査では、2025年の中途採用に積極的な企業は90.2%と9割を超えており、正社員の人手不足感が強い職種は3年連続でITエンジニアが1位となっています。企業間の獲得競争が構造的に続いていることがわかります。
とくに給与やリモート環境、技術スタックなどで魅力的な条件を提示されると、転職を選択するハードルは下がりやすくなるでしょう。
このような売り手市場の状況では、企業側が何も対策を講じなければ、優秀な人材ほど流出しやすくなります。
出典:マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」
スキルアップ志向の強さ
エンジニアは専門職であるため、スキルアップやキャリア形成への意識が高い傾向があります。
新しい技術に触れたり、より高度な開発に携わったりすることで、自身の市場価値を高めたいと考える人が多いのが特徴です。
例えば、同じ業務の繰り返しや古い技術のままの開発環境では、将来への不安を感じて転職を検討するケースも少なくありません。
企業側としては、研修制度やキャリアパスの提示だけでなく、実務を通じて成長できる環境を整えることが重要です。
入社後のミスマッチ
エンジニアの早期離職でとくに多いのが、入社後のミスマッチです。
採用時にイメージしていた仕事内容や環境と、実際の業務内容にギャップがあると、不満や不信感につながります。
マイナビの調査では、離職リスクを懸念しながら採用したにもかかわらず結果的に離職となった『やっぱり離職』を経験した企業は約4割に上ります。要因として最も多く挙げられたのは『仕事内容のミスマッチ(24.5%)』でした。
例えば、「最新技術に携われる」と聞いていたにもかかわらず、実際には保守業務が中心だった場合、期待とのズレが大きくなるでしょう。
また、チーム体制や働き方、評価制度などが事前の説明と異なるケースも、離職の要因となります。
定着率を高めるためには、求人情報や面接の段階で正確な情報を伝え、入社後のギャップを最小限に抑えることが重要です。
出典:マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」

エンジニアの定着率が低い企業に共通する特徴
エンジニアの定着率が低い背景には、業界全体の構造だけでなく、企業側の採用体制や考え方も大きく影響しています。
同じような市場環境でも、定着する企業とそうでない企業があるのは、この違いによるものです。
ここでは、定着率が低い企業に共通する特徴を具体的に解説します。
エンジニア採用を人事任せにしている
採用活動を人事部門だけに任せている企業は、エンジニアの定着率が低くなりやすい傾向があります。
なぜなら、現場の実態や求めるスキルが十分に反映されないまま採用が進んでしまうためです。
エンジニアの業務内容は専門性が高く、人事担当者だけで適切に判断するのは難しいケースも少なくありません。
その結果、スキルや志向が合わない人材を採用してしまい、入社後にミスマッチが発生します。
実際の業務内容やチームの雰囲気を理解しないまま入社すると、ギャップを感じて早期離職につながる可能性があります。
年収や条件だけで採用している
年収や福利厚生といった条件面だけで採用を行っている企業も、定着率が伸び悩む傾向があります。
年収や福利厚生は重要な要素ですが、それだけでは長期的な定着にはつながりません。
エンジニアは、働く環境や技術スタック、成長機会なども重視する傾向があります。
そのため、条件だけで入社を決めた場合、入社後に「思っていた環境と違う」と感じやすく、離職のきっかけになってしまいます。
また、条件面での競争は大手企業や資本力のある企業が有利です。
中小企業が同じ土俵で戦うのは難しく、結果として人材の流出につながるケースもあります。
KPI設計ができていない
採用活動を経験や勘に頼って行っている企業も、定着率が低くなりがちです。
明確な指標やデータに基づいた改善が行われていないため、同じミスを繰り返してしまう可能性があります。
例えば、「どの採用チャネルから入社した人材が定着しているのか」「どの段階で離職が多いのか」といった分析ができていないと、原因の特定が難しくなるでしょう。
採用プロセスを見える化し、KPIを設定することで、課題を具体的に把握できるようになります。
数値に基づいて改善を繰り返すことで採用の精度が高まり、結果として定着率の向上にもつながります。
エンジニアの定着率を下げる採用段階のよくあるミス3選
エンジニアの定着率は、入社後のフォローだけで改善できるものではありません。
実際には、離職の原因の多くが採用段階でのミスマッチにあります。
とくに求人情報の内容や伝え方によって、入社後の満足度は大きく左右されるでしょう。
ここでは、定着率を下げてしまう代表的な採用ミスについて解説します。
魅力が伝わらない抽象的な求人表現
求人票に「アットホームな職場」「成長できる環境」といった抽象的な表現ばかりが並んでいる場合、エンジニアにとっては魅力が伝わりにくくなります。
なぜなら、抽象的な言葉は多くの企業が使っており、具体的な違いが見えないためです。
エンジニアは、技術スタックや開発環境、チーム体制といった具体的な情報を重視する傾向があります。
そのため、抽象的な表現だけでは判断材料が不足し、応募を避けられる可能性があります。
「アットホーム」と感じるかどうかは人によって異なるため、期待とのズレが生まれるのが原因です。
求人情報は、具体的かつ客観的に伝えることを意識しましょう。
技術スタックやチーム構成が不明
エンジニアにとって、どのような技術を扱うのか、どのような体制で開発を行うのかは重要な判断基準です。
例えば、使用言語やフレームワーク、開発手法、チーム人数などが不明な場合、入社後の働き方を具体的にイメージすることが難しいでしょう。
その結果、「思っていた環境と違う」と感じて早期離職につながる可能性があります。
とくに経験豊富なエンジニアほど、技術環境や開発体制を重視する傾向があります。
必要な情報が不足していると、それだけで応募を避けられてしまうこともあるため、できる限り具体的に記載することが重要です。
実態と乖離した求人内容の掲載
求人内容と実際の業務にズレがある場合、定着率は大きく低下します。
いわゆる「釣り求人」と呼ばれるような誇張表現や、実態と異なる情報は、入社後の不信感につながるためです。
例えば、「最新技術に携われる」と記載されていたにもかかわらず、実際には保守業務が中心だった場合、期待とのギャップは大きくなります。
このような状況では、モチベーションの低下や早期離職を招く可能性が高まるのです。
短期的には応募数を増やせるかもしれませんが、長期的に見ると企業の信頼を損なうリスクもあります。
エンジニアの定着率を上げる具体的な方法
エンジニアの定着率を改善するには、入社後のフォローだけでなく、採用段階から見直すことが重要です。
とくに、ミスマッチを防ぐ仕組みを整えることで、長く活躍できる人材を確保しやすくなります。
ここでは、定着率を高めるために企業が取り組むべき具体的な方法を紹介します。
ビジョンに共感する人材を採用する
エンジニアの定着率を高めるうえで重要なのが、企業のビジョンや価値観に共感する人材を採用することです。
単にスキルや経験が合っているだけでは、長期的な定着にはつながりにくい場合があります。
なぜなら、働くうえでの価値観や目指す方向性が合っていないと、徐々に違和感が生まれるためです。
たとえ条件が良くても、「やりたいことができない」「会社の方向性に共感できない」と感じると、転職を考えるきっかけになります。
採用時には企業のビジョンやミッションをしっかり伝え、候補者との相互理解を深めることが重要です。
求人情報を具体化する
求人情報の具体性を高めることも、定着率向上に欠かせません。
抽象的な表現ではなく、実際の業務内容や技術環境、働き方などを明確に伝えることで、応募者との認識のズレを防ぐことができます。
例えば、使用している言語やフレームワーク、開発体制、チームの人数などを具体的に記載することで、入社後のイメージがしやすくなります。
また、良い点だけでなく、業務の大変さや課題についても正直に伝えることが重要です。
リアルな情報を提示することで、入社後のギャップを減らし、結果として定着率の向上につながります。
現場エンジニアを採用に関与させる
現場エンジニアを採用プロセスに関与させることも、定着率を高める有効な方法です。
実際に一緒に働くメンバーが選考に関わることで、スキル面や相性をより正確に見極めることができます。
また、候補者にとっても、現場のリアルな情報を直接聞ける機会です。
仕事内容やチームの雰囲気を具体的に理解できるため、入社後のイメージとのギャップを減らすことができます。
さらに、現場が採用に関与することで、受け入れ体制の意識も高まります。
入社後のフォローやコミュニケーションがスムーズになり、結果として定着しやすい環境づくりにつながります。

まとめ|エンジニアの定着率は「採用戦略」で大きく変わる
エンジニアの定着率改善は、採用の進め方を変えることから始まります。
求人情報の具体化や現場の関与といった施策は、自社内でも取り組める部分です。
一方で、「どの採用チャネルが定着につながるか」「どの段階でミスマッチが起きているか」といった分析・改善を継続して行うには、採用全体を俯瞰できる体制が必要です。
採用の設計から見直したい場合は、採用代行(RPO)の活用も選択肢の一つです。自社の採用課題を整理するところから、ぜひ一度ご相談ください。

