エンジニアの離職率はどのくらい?平均・原因・対策を解説

エンジニアの離職率が高まると、採用費が増えるなどの問題を引き起こします。また、現場では穴埋めのために残業が増えることになるでしょう。結果、品質が下がり、さらなる離職を招きかねません。

これを防ぐためには、エンジニアの離職率を理解して先手を打つことが重要です。本記事では、エンジニアの離職率や離職が増える構造要因、可能な限り離職率を下げる方法まで整理して解説します。

エンジニアの離職率や平均はどのくらいか

エンジニアの離職率や平均について、統計情報から確認しておきましょう。

日本企業の離職率

最初に、参考情報として日本全体での離職率を紹介します。

厚生労働省「雇用動向調査(令和6年)」では、年初の常用労働者数に対する離職者数の割合(離職率)は以下のとおりです。

離職率14.2%
(参考)入職率14.8%

前年差では入職率・離職率ともに低下しています。また同調査では、雇用形態によって差があることも示されました。

一般労働者(パート以外)11.5%
パートタイム労働者21.4%

エンジニアの離職率平均

「エンジニアの離職率平均」は公的な統計としては公開されていません。そのため、エンジニアに近い統計情報を用いて評価することが一般的です。多くの場合、雇用動向調査のうち産業別の「情報通信業」を参照して離職率を評価し、2024年は10.2%でした。

つまりIT業界全体で見れば、日本全体の離職率よりも低いと評価できます。ただ、あくまでも平均であり、個々の企業や職場によって体感は大きく変化します。

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況

参考:日本と米国の違い

日本の離職率(年次)は「雇用動向調査」で把握され、米国は「JOLTS(Job Openings and Labor Turnover Survey)」で評価されます。たとえばJOLTSでは、2025年12月のquits rate(自発的離職率)が2.0%でした。単純に年換算すると約24%です。

ただ、日本の離職率とは分母や集計の考え方が異なるため単純な比較はできません。また、一般論として日本は他国と比べ労働移動が低い傾向があるため、IT業界も離職率は他国よりも低めです。

そもそも離職率とは

離職率の状況を理解したうえで、具体的にどのように算出されているかも解説します。

離職率の計算方法

雇用動向調査では、離職率が次式で整理されています。

離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)

この「常用労働者」には定義があり、1か月以上の雇用などの条件を含みます。また、同一企業内の他事業所への転出は除くなど、集計ルールがある点も重要です。

離職率と転職率の違い

離職は「会社を辞めた」ことであり、必ずしも「転職した」とは限りません。離職後に未就業、学業、起業などもあり得るからです。雇用動向調査でも、入職者を「転職入職者」「未就業入職者」に分け、転職入職率の定義も別に置かれています。

したがって、企業比較では「離職率」だけでなく、中途採用である転職入職も確認しましょう。これにより、離職率が高い企業か、人の入れ替わりが多い企業かの判断ができます。

IT業界の離職率が高いとされる理由

IT業界は人が動きやすい業界です。転職が一般化しているので、課題がある会社はもちろん、課題が小さくても人材が流動します。

労働時間が長い

エンジニアは納期や障害対応、仕様変更が重なると業務量が一気に増えがちです。特にリリース前やトラブル時は突発対応が続き、残業が常態化することもあります。長時間労働は体力面だけでなく、生活リズムの乱れや不公平感につながり、離職の引き金になるのです。

下請け構造に不満を抱きやすい

多重下請けの現場では、上流で決まった要件変更や無理な納期を下流がカバーしがちです。裁量が少なく責任だけ重い状況に陥ってしまいます。成果が見えにくく評価にも反映されにくいため、「この環境で続ける意味があるか」と感じ離職に至ります。

業界的に転職しやすい

エンジニアは需要が高く、スキルがあれば次の職場を見つけやすい環境です。転職サイトやエージェントの情報も豊富で、年収や働き方を変える選択肢を簡単に得られます。その結果、職場に不満があると転職で解決する離人が増え、転職率が高くなりやすいのです。

教育体制が整っていない

現場が忙しく、OJTが属人化すると、体系的な育成が思うように進みません。新人が現場でスキルアップできず、自己学習だけになるのです。結果、成長している実感を得られず、より学べる環境を求めて転職・離職につながります。

キャリアサポートがない

評価基準や等級定義が曖昧で、将来の道筋が見えないと不安が増えます。面談が形式的で、スキルの棚卸しや次の責任が示されない場合、「ここで頑張っても報われるのか」が不透明になるのです。キャリアの見通しが立たない職場は、離職の決断を後押ししてしまいます。

離職率の調べ方

離職率は公開されていないことも多く、複数の情報源を組み合わせて推定するのが現実的です。数字だけでなく背景まで確認すると精度が上がります。

面接などで企業の人に直接聞く

面接では離職率を率直に確認できます。「直近1年の離職率」「エンジニア職だけの退職理由」「配属予定チームの離職状況」など具体的に聞いてみましょう。回答が曖昧な場合は、離職の多い時期や改善施策の有無も合わせて確認します。

ハローワークの求人票から読み取る

求人票には、平均勤続年数や残業、休日などの情報が記載されている場合があります。離職率そのものがなくても「同じ職種の求人が長期で出続けている」「募集人数が常に多い」場合は課題が潜んでいるかもしれません。読み取った情報と質問で、より正確な情報を得るようにします。

転職エージェントからの情報提供を受ける

転職エージェントが、入社後の定着状況や退職理由の傾向を把握しているかもしれません。以下の情報を問うてみると良いでしょう。

  • 辞めやすい部署
  • 評価の不満が多いか
  • スキルアップ環境はどうか など

可能であれば複数の転職エージェントに問い合わせることで、情報の正確性を高められます。

就職四季報を確認する

就職四季報は、企業ごとの離職率や残業、年収などを横並びで比較できる資料です。特に上場企業や知名度の高い企業は情報がまとまり、情報の一括把握に活用できます。気になる会社は、年度推移もみると、より離職率が掴みやすいでしょう。

離職率の高い企業の特徴3選

離職率が高い企業には、働き方・評価・報酬のどこかに納得できない点が含まれがちです。

残業時間が多い

エンジニアに限らず、残業が多い職場は離職率が高くなりがちです。納期設定や要件変更の吸収が現場任せで、心身ともに負担がかかるからです。疲労だけでなく、計画的に働けないことがプライベートの不満へとつながります。さらに残業が評価や手当で報われないと、より離職の決断が早まるのです。

適切な評価を受けられない

評価基準が曖昧だと、頑張りが昇給や昇格につながらず離職を招きます。特にエンジニアは人によって仕事内容や成果が異なるため、評価基準の明示などがなければ不満を持ちがちです。何を達成すれば評価されるかが不明な環境は、離職率の増加を招きます。

労働に見合った給与がない

市場価値が上がりやすい職種ほど、給与面での不満が出がちです。他社と比べて明らかに低いと、離職につながるでしょう。

また、年収だけでなく昇給の頻度、等級ごとのレンジ、評価と報酬の連動もポイントです。頑張っても報われない職場では、給与を理由に離職されることが増えてしまいます。

離職率の低いホワイト企業の特徴

離職率が低い企業は、一定の共通点を持っています。

事業会社や自社開発会社である

自社プロダクトや自社サービスを持つ企業は、離職率が下がる傾向にあります。開発の目的が事業KPIに結びつきやすく、優先度や仕様変更の理由も共有されやすいからです。事業内容として裁量が増えることで納得感が高まり、離職を考える理由が減ります。

大手や子会社で安定している

大手や大手グループ企業は、労務管理・評価制度・コンプライアンスなどの仕組みが整う傾向があります。また、急な業績悪化や資金繰りの不安が相対的に少なく、雇用の見通しが立ちやすいこともポイントです。また、エンジニアであれば研修が充実しているなど、働き続けるメリットを感じやすい企業が増えました。

残業時間が少ない

残業が少ないことで、プライベートとのバランスが取りやすいことは大きなポイントです。また、業務量の調整や優先順位付け、役割分担が適切であるという安心感もあります。仕事が属人化していない、急な割り込みが起きてもリカバリーできるなど、組織としての安定感が定着につながるのです。

年間休日が多い

休日が多い企業は、休息・家族時間・自己投資などを確保しやすくなります。加えて、有休取得のしやすさや代休の取りやすさなどエンジニアが働きやすい環境はより魅力的です。オンとオフの切り替えができる職場は「エンジニアの燃え尽き」が起きにくく、定着しやすいといえます。

エンジニアの離職率を下げるための方法

離職率の改善は現場の不満要因を減らすことが最優先です。働き方・負荷・評価・成長・関係性を段階的に整えていきましょう。

柔軟な働き方を導入

リモートワークやフレックス、時短勤務などの選択肢を用意すると、通勤負担や家庭事情による離職を減らせます。重要なのは制度だけでなく運用です。評価が出社前提になっていないか、会議時間が偏っていないかを整え、「使っても不利にならない」環境にすると定着につながります。

労働時間の適切な管理

残業を減らすには、個人の頑張りに頼らず仕組みで抑えることが必要です。要件の曖昧さを減らす、見積りの根拠を残す、仕様変更を企業として断るなどが求められます。障害対応は当番制・代休・手当を整備し、特定の人に負荷が集中しない仕組みが必要です。

福利厚生の充実

福利厚生は「働き続ける理由」を増やす施策です。以下のように実際に使いやすい制度を拡充すると良いでしょう。

  • 在宅手当
  • 学習補助
  • 健康支援
  • 育児介護支援など

制度が多くても利用しにくいと意味がありません。申請の手間や条件を見直し、定期的に改善する運用が重要です。

適正な評価と給与を導入

離職率が高まる大きな要因に、評価への不信感が挙げられます。不信感を和らげるため、以下のような評価軸を設けておきましょう。

  • 等級ごとに期待される役割
  • 評価項目
  • 昇給・昇格の条件

それぞれを明文化し、面談で根拠を説明できる状態にすべきです。また、成果だけでなくプロセスや技術的貢献も評価対象に含めると納得感が高まります。市場水準を踏まえた給与レンジの見直しも欠かせません。

スキルアップできる教育体制を充実させる

研修や勉強会はもちろん、実務でも成長できる仕組みが必要です。メンター制度、レビュー文化、学習時間の確保などを整えましょう。また、資格・カンファレンス支援などを組み合わせると理想的です。本人の希望に沿ったスキルアップができれば定着しやすくなり、離職率は自然と下がります。

コミュニケーション環境を整備する

孤立やすれ違いは離職につながりやすいため、相談しやすい土台が必要です。

  • 1on1の定着
  • 課題の早期共有
  • 設計・コードレビュー
  • プロジェクトの振り返り など

エンジニア個人が問題を抱え込まないコミュニケーション環境を作ります。また、情報共有のルール化やドキュメント整備も有効です。

まとめ

エンジニアの離職率は高い・低いという数字の議論に捉えられがちです。しかし、本質はもっと現場寄りであり、日々の負担が離職につながることを理解しなければなりません。単に数値として捉えるのではなく、退職理由など現場の実態を把握することも重要です。

そして、離職率の改善は採用の話と切り離せません。離職が続けば欠員補充が常態化し、要件が固まらないまま採用活動が長引くのです。

現場と対話し、要件を言語化すれば、必要なエンジニアは自ずと見つかります。市場が厳しい中でも「辞めにくい組織」と「自社に合う採用」を確立できるとエコーズは確信しています。

この記事の執筆者

株式会社エコーズ代表 児玉明

企業が自走できる採用体制をつくることをゴールにした採用支援サービスを提供。
採用計画の立案からスカウト実務、選考フロー構築、内製化支援まで、データと現場の両面からからアプローチし、再現性のある採用成果を実現。エンジニア出身の経験を活かしエンジニア採用が強み。
■ ITエンジニア経験24年
■ 人材採用経験10年